平沢亨(Drummer & Composer)

Q7;音楽を通じて、一番伝えたい事は何ですか?
「ムードや世界観」と言いたいところですが、これは「それを通じて何を一番伝えたいのか」という主旨の質問だと思うので、伝えたいというよりはむしろ、相互通行の自己投影の中で「何が一番伝わったのか」の方に、より興味がわく、というのが本音です。
「これこれこういうことを伝えたくて、音楽をやっているんだ〜」とは、あまり考えていませんし、逆に無作為で無目的であればあるほど、その芸術的説得力は強いのではないか、とすら考えています。実際にこの質問に触れて、改めて自問自答してみましたが、なかなか明確な回答が見つかりません。
例えば、セシルテイラーというピアニストのレコードを初めて聴いた時、私は確信を持って「彼は臆病で挙動不審だ」と感じました。対面したことも、何かしらの彼による筆記を読んだこともないので、実際のところはどうかわからないままではありますが(無礼を承知で記述を続けます)、正誤はどうあれ、私がそういう感想を抱いたということは、確かな事実なのです。
そして彼が、「みんな、俺ってば挙動不審なんだぜ」と伝えたくてピアノを弾いているとは思いにくい、ならば、やはり「伝わり得たことが全て」なのではないか、という考えも生まれて然るべき(仕方ない)ものでしょう。
どの類いであれど芸術は、先述の通り「相互通行の自己投影」だと考えるその必要十分条件が、正にそこにあるわけで、各々がおもんばかった結論の連続こそが、芸術を成立させる大きな要素なのではないでしょうか。ちなみに私はセシルテイラーのそういった演奏も、バドパウエルの豪快な演奏も大好きです。
さて、ここに導かれる結論として、一番伝えたいことは「自己」なのではないか、と一瞬考えましたが、細緻な言い方をすれば「自己投影を目指しはするが、かと言って演奏を聴いてくれた側がそれと正反対の解釈をしたとて、何らの問題も生じない」となります。つまり、伝えたいことは「伝わったこと」です!
自発的で主観的な感想を、大事にして下さい。
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