jazzミュージシャンインタビュー企画
 
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毎月、日本で活躍中のjazzミュージシャンを紹介していきます。

第9回 【 クリヤマコト(P)】

プロフィール

神戸生まれ。アメリカ、ウエストヴァージニア州立大学言語学部卒業。
 在学中から地元ライブハウスなどで音楽活動を始め、大学卒業後本格的にジャズ・ピアニストとして活動を開始。グラミー受賞者チャック・マンジョーネ、民族音楽学権威ネイサン・デイヴィス教授のグループに参加して全米をツアー。各地ジャズフェス、TV番組に出演するほか、ドナルド・バード、トゥーツ・シールマンス、ジェームズ・ムーディー、トム・ブラウンなど多くの巨匠たちと共演した。またICHIBANレーベルよりファースト・リーダー・アルバムをリリース。

 学生時代に交流を深めた黒人コミュニティーの影響を強く受け、極めてグルーヴィーでソウルフルなプレイが特徴。 1990年に帰国後は、日野皓正グループに参加してツアーをおこなうほか、マービン・スミッティ・スミス、ジェームズ・ジナス、ゲイリー・トーマスなどの旧友を迎えたアルバムを次々に発表。
 現在までに10枚以上のリーダー作を リリースしている。近年はプロデュース/アレンジ活動も多くなり、TOKU、土岐麻子、MAYA、平井堅、伊東たけし、渡辺美里、上妻宏光、ナチュラルハイなどを手がけている。作曲家としては平井堅、伊東たけし、土岐麻子らに楽曲提供する他、テレビ/ラジオ番組主題歌、映画音楽、CM、ショー音楽も数多い。
 2004年、パリのユネスコ本部大ホールで行われた「国際音楽の日」記念音楽祭に招聘され、ジョニー・グリフィン、ビリー・コブハム、ジョン・ファディス、エイブラハム・ラボリエル等と共演。2005年にもヨーロッパツアーを成功させ、国際的評価を高めている。2006年春にニューアルバムをリリース予定。
クリヤマコト公式HP


Q1;現在の主な活動を教えて下さい。
ぼくの新しいピアノトリオと、ラテンジャズ・バンド「Rhythmatrix」を中心に活動中。他に土岐麻子さんのアルバム「Debut」でアレンジをやってます。SFKUaNK!!というバンドのアルバムが12月、納浩一グループのアルバムが1月にリリースされるのですが、それにも参加しています。あとタップダンサーの熊谷和徳グループに参加したり、TOKU、太田剣、神谷えりちゃんなんかと、都内ライブハウスでよくセッションをやってます。
 それから、昨年以来ヨーロッパで活動をしています。去年は「国際音楽の日」というのに招かれて、ユネスコホールでライブをやりました。今年はパリのジャズフェス「Jazzy Colors」を中心に4カ国5カ所で公演し、大好評で地元媒体の取材などもいろいろ受けてきました。パリではピアノソロでレコーディングもしてきました。今後も引き続き海外での活動を行う予定です。
 ほかにこんなのやってます。
http://www2.nissan.co.jp/MURANO/Z50/0506/CONCEPT/main2.html
毎月ぼくの書き下ろし新録音曲がアップされるので、是非チェックしてください。10日前後に更新されます。



Q2;いつ頃からjazzミュージシャンになろうと思われたのですか?何かきっかけがあったのでしょうか?
何せ好きなんでずーっとジャズはやってたけど、実際にプロになろうと思ったのは帰国直前くらい。それまでピッツバーグ大学でジャズを教えながらサイドメン活動をしてたんだけど、地方大学で教える生活にピリオドを打って、NYか東京で自分の音楽活動をしようと思った。それでアルバムを出した。
きっかけ?単にこのままじゃダメだと思っただけ(笑)。


Q3;jazzをどのようにして習得されたのですか?
ひたすらエアチェックとコピー。アメリカは昔からジャズ専門FM曲がたくさんあったから、そればっかり聴いて、好きなプレイを録音しては耳コピーしてた。誰が弾いてるのかも知らずにコピーしてて、あとでキース・ジャレットだったんだとか、これがハービーだったんだ!ってかんじ。あとは近所の黒人ミュージシャンたちとギグをやって、現場で場数を踏んだ。テクニックはひたすら独学、フィールは実際に黒人スラム街のクラブとかで実地体験。


Q4;影響を受けたミュージシャンは誰ですか?
いっぱいいすぎて語れない。実際に共演したアーティストからはもちろん、ダイレクトな影響を受けた。という意味では語りきれないので、「むしろ身近な黒人の友人から最も影響を受けた」といつも答えてます。
ジャズにおいては技術面以上に、魂の部分が重要。モダンジャズは差別と迫害の歴史の中から生まれた黒人ルーツの音楽なので、黒人社会の空気やイデオロギー、彼らにとっての音楽の意味、ジャズが生まれた理由などを理解すること何よりも重要だと思う。ぼくは身近なコミュニティーの中でいろんな経験をして、それを十二分に吸収できた。黒人に囲まれて黒人音楽やってると、鏡を見ない限り自分も黒人だと思ってる(笑)。そんな環境の中で今だに存在する人種差別とか、アメリカ社会の欺瞞とか、アメリカ黒人アーティストが皆考えることをぼくも一緒に考えてました。


Q5;現在使用している楽器の種類を教えて下さい。
ピアニストはライブ会場でピアノを選べません。その意味では最も不利な楽器だと思う。でも実は自宅にはグランドがなかったりして(笑)。アップライトで作曲とかやってます。でもライブではアップライトは避けたい。ぼくがよくやるコンテンポラリー・ジャズだと、アップライトじゃドラマーに負けるからね(^_^;)。電子楽器はヤマハさん、カワイさんのエンドースメント受けて、実にいろんな楽器を使わせてもらっています。
この場を借りて御礼申し上げます。


Q6;演奏する時に(ライブの時)、一番気にされることは何ですか?
集中することかな?ぼくはどっちかっていうとアンサンブル型のアーティストで、演奏しようとする音楽と、ミュージシャンの相性なんかはわりと気にする方です。音楽の目的は「快楽」だと思っているから、確かな心地よさを生み出すグルーヴ、音楽空間をメンバー全員で絶妙に生み出せないと気持ち悪い。天にも昇るような音楽の高揚感、開放感、カッコ良さは、それがあって初めて得られるもの。


Q7;音楽を通じて、一番伝えたい事は何ですか?
生命の躍動。生命力。生命のたくましさ。黒人音楽が生まれた動機はすべてその部分だと思う。たくましさのない黒人音楽はない。如何に困難な生活を笑い飛ばすか、如何に苦しみを跳ね返すか、如何に自分たちを信じて生きていくか。その生命力の美がジャズの全てだと思う。


Q8;jazzミュージシャンを目指している人にアドバイスをお願いします。
上記でぼくが言っているような、真実の意味でのジャズを思考する日本の若者は、最近は随分少なくなっていると思う。彼らは事実として黒人じゃないわけだし、それはそれで仕方がないことだ。アメリカの黒人にしても、音楽家になろうと思って即座にジャズ・アーティストを目指す人は少なくなっている。むしろ白人の方が多いくらいかもしれない。
だからジャズ・ミュージシャンを目指す人へのアドバイスっていうのは、実は考えにくい。本気でジャズをやろうと思うなら、上にも書いたようにジャズの神髄を良く理解してほしい。それで果たして食っていけるかどうかは保証しません(笑)。むしろ、一般に音楽家を目指す人へのアドバイスの方が現実的だと思う。「本物のジャズ」も、「ジャズ風の音楽」も両方含めて。とにかく多くの音楽を聴いて、あらゆる音楽のフィーリング、グルーヴ、エッセンスを身体で掴むこと。例えば今から演奏しようとする音楽が、何を求めているのかを的確に理解できるようになること。自分が何を求めてるかとか、リスナーが何を求めてるかじゃなくて、「音楽」そのものが何を求めているのか。この音楽はどんなグルーブを求めてるのか、どんなフィールを求めてるのか、それを誤解してる人は絶対優れたアーティストにはなれない。アンサンブルをやっても邪魔になるだけで、圧倒的な快楽や高揚感を生み出すことはできない。
「音楽」が求めるものを体得するには、自分が好きな音楽にひたすら打ち込むのは重要だと思う。何より音楽に対して謙虚であること。音楽とは計りしれない偉大なモノだってことをまず知っていて欲しい。音楽家なら当たり前のことだけど。



Q9;これからjazzを聴いてみようという方に、jazzの良さを教えて下さい。
一般にジャズの魅力というのは、西洋音楽の決まり事へのアンチテーゼという部分です。12音階、和声、っていうのが西洋音楽の基本だけど、アフリカ音楽にはそういう決まり事がなかった。西洋では濁りのない清らかな声が美声とされたけど、アフリカではどことなく濁ったような太い声が美声とされた。西洋ではドミソを基本とした和声的な響きを好むけど、アフリカでは緊張感を生むような濁ったハーモニーが好まれた。西洋音楽では整った2拍子、3拍子、4拍子などが好まれたが、アフリカでは複雑に組合わさって絡み合ったポリリズムが好まれた。アメリカに渡った黒人たちも、そんなアフリカ人の嗜好を受け継いでいた。彼らが西洋の楽器を使って、西洋音楽を自分たちの好みにアレンジして生まれたのがジャズ。だからジャズの魅力は、生々しい人間味の溢れる力強い音色や歌声、テンションと言われるちょっと不協和なハーモニー、独特のうねりを持つリズムのグルーヴというわけ。
もう一つ重要なのはインプロヴィゼーション=アドリブ。西洋クラシックの多くは細かく譜面に書いてある音符をそのまま演奏するけれど、ジャズの譜面はメロディーと最低限のコード進行、イントロやエンディングの決まり事しか書いてない。最低限の決まり事だけがあって、それ以外のことは全て自由に演奏していい、ってとこがジャズの最大の魅力。だからプレイヤーの度量やセンスが全部ダイレクトに反映される。でも「ジャズとは何か?」っていう定義は意外に曖昧で、上記のような要素を持つ音楽をすべてジャズと呼ぶ場合もあれば、過去のディキシーランド〜モダンジャズまでのスタイルのみをジャズと呼ぶ場合もある。ぼくは前者の解釈でジャズやってます。


Q10;jazzミュージシャンになっていなかったら、どんな職業に就いていたと思いますか?
どうですかねえ?全ての可能性があったでしょうね。

Q11;普段jazz以外で好んで聴く音楽があれば教えて下さい。
ゴスペル、ソウル、R&B、ヒップホップ、その他黒人音楽一般、ボサノヴァ、サンバ、サルサ、フラメンコ、その他ラテン音楽一般、クラブ音楽、クラシック、純邦楽、まだあるかな?音楽をあまりジャンルでは聴かないなあ。良い音楽はジャンルに関係なく良い。傾向としては、エスニシティの濃厚なうねりのある音楽を好む。


Q12;今後の活動予定を教えて下さい。
今年はピアノトリオ、ピアノソロのアルバムをリリース予定。リリース時にはまたお知らせします。ライブも定期的にやっているので、是非オフィシャルページをチェックしてください。http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/live/schedule.html
 とりあえずは1月16日に東京芸術劇場「POPSコンサート」に参加します。新日本フィルさん、女優の夏木マリさんと共演予定。1部では新日さんとぼくの共演でガーシュウィンの「サマータイム」と「フライミー・トゥー・ザ・ムーン」をやり、他にもぼくのトリオ+ストリングスで数曲、2部ではぼくのアルバムに収録されている「The Voyager」という曲をフルオケバージョンでやり、次いで夏木マリさんをフィーチャーしてお芝居と音楽が共存しているようなヨーロピアンでユニークなナンバーを6曲プレイします。
 あと、「ふるさと-JAPAN」というアニメ映画の音楽を担当しました。今年公開予定です。




ラテン・タッチ/クリヤマコト
クリヤのプロデューサーとしての側面とプレイヤーとしての側面をバランス良く打ち出し、過去の音楽活動の集大成ともいえる作品。イラク戦争直前に戦争回避を願って作曲した「The Voyager」を含むこのアルバムは、コアなジャズファンのみならず広く一般の人に聴いてほしいというコンセプトの元に制作された。ラテン・ヨーロッパの情熱的なイメージで作られた本作は、特に生き生きした現代女性たちから圧倒的支持を受けている。
TBSドキュメンタリー番組「ZONE」挿入曲、TFM「marie claire」新装刊CMタイアップ曲のほか、クリヤが平井堅に楽曲提供したジャズナンバー「世界で一番きみが好き?」のインストバージョンも収録。

http://members.jcom.home.ne.jp/tothemax/work/work_self.html
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